街道をゆく 14 南伊予・西土佐の道 (朝日文庫) 作者: 司馬遼太郎 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2008/11/07 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 旅行の目的が、その旅程であっても悪くはなかろう。 夏休みに高知に行く、と壮語して…
その銃弾は人を殺さず、子供たちが想う友人の笑顔を伝え、古くより人々が心を寄せて描いてきた文化の文様を刻む。 それは、戦争に対する最大の皮肉だと思う。 憎しみと恐怖によって用いられ、生命を奪い、社会を毀すことを企図して銃弾を作った者たちは、そ…
「魚を与えるんじゃなく、魚の釣り方を教えるんです」とドヤ顔で言われると腹が立つ。 第一、だいぶ手垢のついた表現だ。ドヤ顔で言うならそんなベタな骨董表現ではなく、もっと括目に値することを言ってほしい。 そして、いわゆる「Why、How、What」のHowま…
美しく、深く織りなす本を読んだ。 『鏡のなかのボードレール』くぼたのぞみ(共和国)。 鏡のなかのボードレール (境界の文学) 作者: くぼたのぞみ 出版社/メーカー: 共和国 発売日: 2016/06/09 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 言葉は…
しあわせなみださんの「月光」鑑賞会に参加してから、感想めいたものをまとめようと思いつつ半月がたち、東京での上映は今週末までとなってしまった。 何かがひっかかって、所感がまとまらない。 良い映画でした。扱うテーマを鑑みて語弊があるかもしれない…
「撮るもの」が「撮られるもの」を撮るなかで、「撮るもの」自身はどのような物語を紡ごうとしているのか。 この本は何について書かれた本なのだろうと、読みながらずっと思っていた。アストリット・キルヒヘアという人の物語では、とどまらないと思う。ビー…
梅雨といえば『いま、会いにゆきます』が思いうかぶが、物語のなかで降る雨は、愛する人たちを包み込む慈しみの雨なのだろうかと、僕は疑問をおぼえてしまう。 雨は、一人で濡れるものだ。 ラカンに鏡像段階という説がある。どこまでが自分の身体か判然とし…
著者の方にお会いしたいな、というのが感想で、それはこういった問題を地に足をつけて研究している年齢の近い研究者の方がいて嬉しかったから、でもあるが、茨城大学の先生だから、という理由が大きい。 茨城は僕の出身地で、茨城大学は父母の通った大学で、…
パフェは難しい。 そもそも、パフェについて真面目に考えたことがある人はどれほどいるのだろう。人生で30分以上パフェについて考えたことがある、という人は是非名乗り出てほしい。 ともあれ、パフェは難しい。 なぜパフェは難しいか。それは多様性と時間経…
「ペンは剣よりも強し」は、僕を育てた学校の校章で、同窓の諸先輩後輩も胸に刻んでいる訓戒だと思う。 が、その解釈は人それぞれに違っているのではないか。 ある人は、高橋是清のように国家の武力・戦争を文治によって引き留めようという覚悟と読むかもし…
楔はどこか。 女性活躍やダイバーシティやマイノリティのエンパワーメントなどを謳っていて、男性正社員モデル(「箱入りおじさん」層)にメスを入れようとしないのは怠慢だと思うけど、最近はそういった男性へのアプローチもだいぶ増えてきた。 働き方とい…
家紋のカフスなんて超絶ダサい代物だけど、祖父の遺品とくれば遠慮なく受け継ぐに限る。 僕の一族的ルーツは、鎌倉期より秋田県と山形県の境あたり、鳥海山と日本海にはさまれた出羽国由利郡に土着していた国衆、打越(内越)氏にある。 打越氏は風雅な山間…
うんざりするような現実もある。テロの続く戦時下のイスラエルではなおさら。 でも、ささやかで静かな生活がある。息子が生まれたり、妻にダイエットを勧められたり、仕事のためタクシーに乗ったり、父が死んだり。希少で、人間的な生活。 テロや戦争や政治…
10月にノーベル文学賞が発表されるころになると気になるのは、「村上春樹は受賞するのか?」ではなく、「アメリカ文学は受賞するのか?」だったりする。 アメリカ文学の作家は、トニ・モリスン以来ノーベル文学賞を受賞していない。1993年以来ずっと。 (北…
(2014年4月24日 ) 高田馬場で幼少期をすごした者にとって、一番のアミューズメントスポットは駅前のビッグボックスだった。 もう四半世紀前にもなるが当時のビッグボックス1階には噴水があり、奥にはマクドナルドがあり、またアイスクリーム屋さんなんかも…
驚くほどに何の感想もなく、驚くほどに何も浮かばない。 2015年ノーベル文学賞受賞者、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチのデビュー作『戦争は女の顔をしていない』(岩波現代文庫)。 戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫) 作者: スヴェトラーナ・ア…
友人武田真優子氏の友人であり、今度Perfumeのライブにご一緒させていただく、MDアンダーソンがんセンター腫瘍内科医兼Perfume依存症患者(by武田氏)の上野直人先生のご著書。 『一流患者と三流患者』上野直人先生(朝日新書)。 一流患者と三流患者 医者か…
<2014年3月31日のノート転載> 僕は28歳まで学生をだらだら続けながら、ニートのようなフリーターのような生活を送っていて、まともな「就職」をして「初出勤」したのは忘れもしない2008年4月7日月曜日のことだった。 出勤の前日は、なにしろ28年間も風来坊…
28歳まで、僕は会社に就職したことがなかった。 2008年、28歳の3月末、4月から会社員となることが不安で、悲しかった。 毎日同じ電車に乗って、毎日同じ場所に通い、一日中同じ椅子に座って、一日中同じ人と顔を合わせて、一週間を過ごすなんてことが、それ…
吉野家がセゾングループだったことを、どのくらいの人が覚えているのか。 最近はそもそもセゾングループの説明からしなきゃいけないのが悲しいけど・・・僕がセゾンで働いていたときは、師匠に「牛丼買ってきて」と言われたときは当然吉野家の牛丼を買ってい…
3月8日は「国際女性デー」。 今年は特に何のアクションにも参加できなかったな、、せめて本でも、、と昨年末からに積ん読になっていた一冊を。 『リベンジポルノ』渡辺真由子(弘文堂)。 リベンジポルノ―性を拡散される若者たち 作者: 渡辺真由子 出版社/メ…
平行して読んでいた『ホラクラシー』ブライアン・J・ロバートソン(PHP)と、この『エンゲージド・リーダー』は表裏をなす本だと思った。 『エンゲージド・リーダー』シャーリーン・リー(英治出版)。 エンゲージド・リーダー ―― デジタル変革期の「戦略的…
文学は、人道的なものではない。 人間という存在の極限を追及することが文学であるならば、人がそのような場でどのような言動をし、表情を浮かべ、心情を抱くのかを、いかに悶え苦しむのかを叙述することが営みとなる。感傷の入る余地はない。 言うなれば、…
僕が部屋でどんなかっこうで過ごしているのか、見たことがあるのは、両親をのぞけばドラえもんが指折り数えられるほどの人数しかいない。 冬は、いつも小汚いフリース(女物)を着ている。17年間、着続けている。 この超絶ご愛用のフリースが、もういい加減…
ふとしたことで、『星の王子さま』を再読する。 こんなにも絶望に満ちた物語だと、子供のときは思わなかった。 「だれかが、なん百万もの星のどれかに咲いている、たった一輪の花がすきだったら、その人は、そのたくさんの星をながめるだけで、しあわせにな…
ギャップ埋めること。 企業人としてタフなビジネスの世界で活躍してきた男性が、50歳を過ぎてから社会貢献事業に生涯を投じる。そこにはどのような心境・環境の変化と、ギャップと、跳ぶ覚悟があったのか。 水野達男さんに、そこを聞いてみたかった。 英治出…
タイに進出している日本企業に健康経営の指導をしているMarimo5の大和亜基さんから、タイでは社員のメンタルヘルスのために僧侶を会社に招いて法話をしてもらう、と聞いて、驚いたとともに納得した。 仏教はライフスタイル哲学の側面もあるから、信仰が生活…
『ひきこもることも、不登校も、命がけのクリエーション(創造)だ』という一節が心に残る。 異論もあるだろうけど、僕自身も大学を中退し、あらゆるものから逃避していた時、それは単なる逃避ではなく生きるための術だったと思う。命がけの。 「ある母親は…
2月になって、やっと頭が2016年になってきた気がします。 つらつらと我が身を省みるに、自分の本性としてはディレッタントで、スノッブで、ペダンティックという俗物・贋作性が強い。 そんな俗物性、贋作性を、ちょっと忘れていた気がする。それはハングリー…
笑っちゃいけないんだろうけど、妙に笑えた。 人間は滑稽だ。その滑稽さの裏には、何があるのだろう。恐れか、不安か。そして、滑稽は残虐の双子にもなる。滑稽さの下に、血の川が流れる。 『同性愛は「病気」なの?』牧村朝子(星海社新書)。 同性愛は「病…