耽典籍:新社会人となった友人へ。 『言われた仕事はやるな!』 石黒不二代(朝日新書)

<2014年3月31日のノート転載>

 

僕は28歳まで学生をだらだら続けながら、ニートのようなフリーターのような生活を送っていて、まともな「就職」をして「初出勤」したのは忘れもしない2008年4月7日月曜日のことだった。

 

出勤の前日は、なにしろ28年間も風来坊で生きてきてしまったので、自分に会社勤めなどできるのだろうか、そもそも毎朝同じ場所に通って同じ人と顔を合わせてずっと机に座っているということが理解できないとか、文学の研究者になると信じてきたのに、何故セゾングループで人材業(しかも惣菜人材の育成?!)をやるのか自分で決断したものの狐につままれたような感じとか、そんな想いを抱えながら、東銀座に映画を見に行っていた。

 

映画の後、万年橋にしゃがみこみながら道端の満開の桜を呆然と見ていて、「ああこんな自由な身で桜を見るのはこれが最後になるんだなぁ、、」と考えていたことをよく憶えている。


それ以来、今年の桜はどこで見るのか、来年の桜はどこで見るのか、考えてしまう。


実際のところ、そうやって2008年4月7日から入社した会社は奇跡のような環境でどこまでもチャレンジを許してくれたため、風来坊癖には拍車がかかり、2009年の桜は池袋で見て、2010年の桜は亀有で見て、2011年と2012年の桜は新所沢で見て、2013年の桜は代々木で見て、2014年の桜は半蔵門で見るという結果になり、トライ&エラー&トライの連続なためいいか悪いかよくわからないが2008年に直感で下した自分の決断は間違っていなかったと確信し続けていられているので、まあ僕は幸せなんじゃないかな。


入社した直後に、会社で働くとはどんなことか知っておかなきゃと思って読んだのが、ネットイヤー社長石黒不二代さん著『言われた仕事はやるな!』(朝日新書)。


当時はネットイヤーさんを知る由もなく、起業する気もなく、ただちゃんとした会社員になろうという気持ちで買ったのだが、、、しかし本気でそういう殊勝な気持ちだったなら『言われた仕事はやるな!』という題名の本は買わないのではないかと思わないでもない


内容は、ベンチャー的というかシリコンバレー的な起業マインドに溢れたキャリア形成談で、まだスマホ時代前、Facebook々なぞなくジョブスも元気な頃(といっても6年程前頃の話)の内容ながら、今読み返してみても結構イケるので、2008年の野良犬みたいな僕にとってはいたく開明的で、実に感銘を受けた。


要は、企業の中でも起業家のように働くというオーナーシップを説いている。


『言われた仕事はやるな!』を読んだせいではないが、僕はセゾンの会社で言われた仕事をあまりやらず(事務職採用だったのだが、事務なんて性格的に全然できずミスばかり)、企画書を作ってはいろいろチャレンジさせてもらって(生意気といいながらそんなチャレンジを認めてくれた会社だった)、今に至る。


明日、4月1日から多くの友人達が新社会人になるにあたり、この『言われた仕事はやるな!』を何人かに贈りたかったのだが、残念ながら絶版になっていて、かろうじて自分が読み返す分しか買えなかった。興味があったら中古を探して読んでも面白いよ。


本は贈れないけど、みんなには、「仕事は言われたからやるんじゃない!」くらいの毅然としたオーナーシップを持って、主体的に成長してほしいです。


社会人になって大丈夫かな、とか、心配で心配でって子もいなくはないけれど、信じて応援しています。


みんながっばってね。


あと、、入社して1週間くらいでも、これは自分には絶対合わないとか、この会社ヤバいとか本気で思ったら、辞めちゃっていいと思うぞ。

 

『言われた仕事はやるな!』 石黒不二代(朝日新書)。

言われた仕事はやるな! 朝日新書

言われた仕事はやるな! 朝日新書

 
<2014年3月31日>