耽典籍:有機的組織の血液循環を促す「聞く」技術。『エンゲージド・リーダー』シャーリーン・リー(英治出版)

平行して読んでいた『ホラクラシー』ブライアン・J・ロバートソン(PHP)と、この『エンゲージド・リーダー』は表裏をなす本だと思った。

 

 『エンゲージド・リーダー』シャーリーン・リー(英治出版)。

エンゲージド・リーダー ―― デジタル変革期の「戦略的につながる」技術

エンゲージド・リーダー ―― デジタル変革期の「戦略的につながる」技術

 

 

たびたび引用する『人を動かす2』は、現代を「接点を増やしながら接触を失っていく」と評している。そこから接触の価値を見直すルートも大事だが、『エンゲージド・リーダー』は接点の質と量を意識し、戦略的に行うことで、接触が少なくとも常に接触しているような温かみ=エンゲージを作るルートを示している。

 

SNSのおかげで、10年ぶりにあう友人と昨日見た映画の話しから始められることがあり、それがビジネスの場で行われれば、社内のコミュニケーションコストは大幅に下がる、ということだろう。

 

その先にあるのは、ソーシャルメディアという毛細血管により、組織としての意思≒情報が血液のようにいきわたった組織であり、その血液によって個々の組織が動くようになれば、それは有機的組織と呼べる。

 

それはホラクラシーであろう。

 

『ホラクラシー』が有機的組織の各部位がいかに動くかの解説書であるならば、『エンゲージド・リーダー』は毛細血管にいかに血液を循環させるのか、の書である。

 

キモは、「聞く」技術かなと思う。

エンゲージドリーダーになるために、「情報収集」→「情報共有」→「エンゲージメント」というステップが示される。「情報収集」つまり先入観なく広くいろいろな話しを聞いてくれないと、その人の情報も共有したくなくなる、エンゲージなんてまっぴらって思うものね。毛細血管は、動脈よりも静脈が大事(医学的には知らないけど、比喩として)。

 

でも「聞く」ことはとても難しい。自分ができているとも思えない。

 

昨年、英治出版さんから出たエドガー・シャインの『問いかける技術』を読んだ時にも、つくづくこれは「問いかける」本ではなくて「聞く」ことの大切さを説く本だなと思った。なかなか「聞く」技術に焦点を当て切った良書には出会わないので、今後英治出版さんが出版してくださることを期待しちゃったり。

 

「聞き上手」になりたいと、切に思っています。切に。