水が流れるように仕事をする

jinjibu.jp

本業より。「男性の育児休職取得」について、ローソン人事企画部長 山口さんのインタビュー。


仕事で一度だけ泣いたことがあって、それはローソンを訪問した後の大崎駅でだった。 

 

2008年、コンビニのフランチャイジーに社員を紹介する事業を立ち上げて、NPOと協働した就労支援を行っていた。秋になり応募してくれる人が増えた。生活に困難を抱え、苦労している人たちだった。

 

事業が軌道に乗った気がして嬉しくて、懸命に推薦状を書いてローソンやファミリーマートに送った。

 

全員、不採用。「急に応募者が増えたので、今は採用しない」という理由だった。

 

何とかして人の力になりたかったのに、無力さが不甲斐なくて、ローソン訪問の帰り、JR大崎駅のコンコースで泣いてしまった。

 

大先輩のコンサルタントが慰めてくれた。「私も、つらいことはいっぱいありました。」とその人は言った。人事として、リストラを断行した経験のある人だった。

 

「水が流れるように仕事をしなさい。」

 

と言われた。いいですか稲葉さん、水が流れるようにです、と。

 

人の力になりたい、助けになりたいと思い入れ、のめり込み、クールさを失い、かえって混乱を生じさせていると、見抜かれていた。執着を捨て、淡々と仕事をすべきだった。

 

「水が流れるように」というのは、ソーシャルセクターに深くかかわるようになって、より意識するようになった。支援したいと力むことで空回り、傷つける人が増えることがある。

 

現場に、心が揺さぶられるような現場にいればこそ、静謐に、水が流れるように仕事をしなければならない。絶対零度の心を持たなければ、誰の力にもなれない。

 

熱い必要なんてない、淡々と、水が流れるように。

 

ローソンの帰り、大崎駅で泣いた数週間後、リーマンショックが起こった。

祝111位! 「ダチョウ倶楽部どうぞどうぞ」を貴女に/「国際ガールズ・デー」によせて

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日本では大量虐殺や、組織的レイプや、強制労働や、人身売買が行われている。Yes?No?

 

・・という問いに、断固としてYesと答える人は少なかろう。が、相次ぐ自殺や、無法サークルや、長時間労働や、JK産業などを思うに、断固としてNoと答えられる自信は僕にはない。むしろ、どちらかといえばYesと思う。日本ではある種の、大量虐殺や、組織的レイプや、強制労働や、人身売買が行われている、、かもしれない。

 

10月11日は「国際ガールズ・デー」。毎年、何らかのアクションに参加しているが、今年はプランインターナショナルさんのイベントに顔を出してきた。最近エシカルファッションがらみで近しいルワンダから活動家の方がいらしゃるので実情を聞きたかったのと、東大の安冨歩教授の講演を聞きたかった。

 

講演内容は記事などにまとまっている。ふんだんなユーモアに示唆と警告とアジテーションを混ぜたお話しだった。

wotopi.jp

 

最も膝を打ったのは、「ルワンダには、虐殺の跡が残り、レイプなどの暴力もなくなったわけではない。日本にはそういった明白な暴力は少ない。でもルワンダジェンダー・ギャップ指数6位、日本は101位(その時点で)。何故か?」「それだけ日本では女性差別が、暴力が隠蔽されて日常化している」という指摘。

 

 内面化され、見えない制度としてこびりついてしまっている悪意・差別ほどやっかいなものはない。それは、生活のはしばしに放射性物質のように飛び散って、社会を、我々を蝕む。

 

日本には見える暴力はごく少ない。しかし内面化されこびりついた見えない何かによって、日々ある種の大量虐殺や、組織的レイプや、強制労働や、人身売買が、小さく、延々と行われている。

 

その後数日、めでたくも日本はジェンダー・ギャップ指数111位となった。2015年から2016年という1年を見ても、女性活躍という空砲音はけたたましいものの、うんざりするようなことが多く、10位後退もむべなるかな、と思う。

 

内面化されこびりついた見えない何かを解消するには、どうすればいいか。

 

とても衝撃的なことがあった。

 

NPO法人マタハラNetさんの研修に参加した折のこと。40名くらいの参加者がおり、各テーブル5,6名が着席した。テーブルでワークをやることになり、誰か一人がファシリテーター(テーブルリーダー)をやってください、と指示があった。ワークが終わって、発表も終わって、お疲れ様でした、さてでは各テーブルでファシリテーターをやった方は手を挙げてくださいと言われた。

 

手を挙げたのは、全員男性(僕含む)。

 

何が衝撃かというと、その研修に参加した男性は7名程で、各テーブルに1人くらい。マタハラNetさんの研修に来る男性なので、旧態依然とした価値観の持ち主ではない。女性もアクティブな方ばかりで、リーダーとして仕事をする方も多い。

 

なのに、お互いよく知らない状況下でファシリテーターを選ぶとなると、男性が「じゃあ僕が・・」とか言って、女性陣が「お願いします・・」とか言っちゃう。

 

内面化されこびりついた見えない何かによって、みんな行動がプログラミングされて、ついつい男性を選出してしまったんだと思う。各テーブルでファシリテーターをやった方、と言われて手を挙げて全員男性だった時、僕はすごく恥ずかしかった。すごくすごく悔しいというか、こりゃマズいと思った。

 

教育学では、ヒドゥンカリキュラムというものを習う。チャイムが鳴ったら席に着く、とか。明示されないけど隠された教育。集団で代表者を選ぶときは、とりあえず男性を選ぶんですよ、というのもヒドゥンカリキュラムに含まれてきたことだろう。

 

このヒドゥンカリキュラムはぶち壊したい。ヒドゥンカリキュラムによって洗脳されてきた我々の、内面化されこびりついた見えない何かを洗濯したい。

 

思うのは、ダチョウ倶楽部の「どうぞどうぞ」。

 

ヒドゥンカリキュラムによって、女性は口火を切りにくい、男性もついつい「じゃあ僕が・・」とやってしまう。しょうがない。でもその後、女性も「じゃあ私も・・」とやって、周りは「どうぞどうぞ」と彼女に譲る。

 

茶番だけど、そんなことをやり続けないと111位はどうにもならないよ。ひねくれたアファーマティブアクションだけど、実践し続けてみたら面白いかな、、と思ってやってみたいと思う。

 

というわけで、111位を更新しないために、ダチョウ倶楽部どうぞどうぞを是非。

 

最後に、勝部元気さんのtweetで知ったけど10年前の日本のジェンダー・ギャップ指数は79位。順調に順位は下落しているけど、指数自体は微増している。要は、日本はほぼなーーんもやってこなかった間に他国にガンガン抜かれているということになる。

 

絶対、男性のせいだと思うんですよね。男性が自分たちの生き方を見直すことなく、旧態依然とした価値観と体制に安住してきて、女性の社会進出応援してるよ、とか言いながら全く他人事だと思っている。女性陣勝手に頑張ってね、と思ってる。で、弊社は女性活躍応援企業ですとかダイバーシティとか言いながら、自らが変わらないといけないと気付かず、お題目だけ掲げて、目立つHPとかには男性(あえておっさんとは言わんが)ばかりが雁首そろえる。

 

111位を恥じる男性がどれだけいるか。111位が解消することで、自分の生き方にも良いことがあると思う男性がどれだけいるか。

 

そこをどうにかしないと。行き止まりまできているんだから。 

 

 

 

インドネシアろうけつ染め×日本の天然藍染めのアクセサリー、studio napas.さん

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ひさびさに、心震えるブランドに出会う。

 

studio napas.という小さなブランドで、柄はインドネシアのろうけつ染め(バティック)、生地は青森の天然藍染めだそうな。国をこえた伝統の掛け合わせ。なごみ系の、どこかアジアを感じる形や柄もかわいらしく、藍色が落ち着く。

 

ささやかだけど、豊かで上質な伝統を背景にもつアクセサリーっていいなぁと、改めて思った。

 

青山スパイラルで見た「MARGINAL GONGS」という舞台のホールに出店されていて、舞台にちなんでゴング(楽器)モチーフのブローチやコースターもあり、僕はブローチを購入しました。

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ファッションというか、身に着けるものを買うというのは一種のセラピーのような要素があるのかもしれない。今の僕には、インドネシアろうけつ染め×日本の天然藍染めのアクセサリーに癒される必要がある・・気がした。

 

昨日、アトリエふわりの鈴木ひろみさんから「服養(服の養分)」という話しを聞いたけど、こんなのもその一種かな、、と。

 

エシカル商品セレクトショップであるエシカルペイフォワードでも扱いたい、とか騒ぐと思うので、メンバー各位ご了承ください。

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余は如何にしてエシカルの徒となりし乎 ~FairTrade Drippack Projectの話/EDAYA前夜~

学生のみんなと活動する理由を問われれば、それは彼女/彼らが社会の変化を敏感に感じとり、体現しようとするからに他ならない。時に突飛でもあるその着眼を聞かせてもらい、どう社会に根付くかを一緒に考え、実行することで、僕は常に蒙を啓かれる。

 

次の次の世の中がどうなるのかの兆しを知り、その社会に向けて歩みださせてもらえるメリットは得難く、学生のみんなの相談話がどれほど荒唐無稽だったとしても、大いに費用対効果のある時間の使い方だと思う。(ちなみに、今まで最も荒唐無稽な話をしてハートに火をつけてくれた学生は、某メロンパンでコンゴにアプローチしようとする御方だった)

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2012年も暮れが近づく、寒い朝。知り合いの学生団体の代表が、「紹介して、相談にのってもらいたい学生がいる」といって連れてきたのが、学生団体FairTrade Drippack Project(通称ドリプロ)の副代表だった。ラオスからフェアトレードのコーヒーを仕入れて焙煎し、販売しているという。

 

運命とはわからないもので、この朝の来訪が僕の人生も大きく変えたことになる。

 

フェアトレードのコーヒーをどう営業していったらいいか、という相談だった。じゃあロットは、在庫は、値入率はとか、提案資料についてとか、テレアポについてとか、営業的な話もしたものの、なんかそういうことでドリプロのみんなが求めるものに応えることはできないなぁ、目指すものに近づいてはいないなぁ・・・と感じた。

 

大体、フェアトレードってなんやねん、と思った。

 

言葉では、フェアトレードを知っていた。商品も買ったことがある。でも、それに関わる人が何を大切にしているのか、どう活動しているのか、社会をどうしたいと思っているのか、全然知らなかった。なんで学生のみんなが、フェアトレードというものに一生懸命取り組もうとしているのかなんて分からなかった。

 

こりゃいかんなぁという反省と、この動きは今後の社会の潮流になるかもという予感から、フェアトレードに首を突っ込んでみたいと思った。

 

僕の師匠は、カンボジア和平の頃から国連の明石さんなどともに認定NPO法人日本紛争予防センター(JCCP)で活動していた人だったが、同団体の理事にU理論で有名な中土井さんという方がいた。師匠から教えられて、僕はU理論を学びたくて何度か研修に参加していたが、ちょうど中土井さんが大崎のパタゴニアでPeople Treeのサフィア・ミニーさんをよんでダイアローグイベントを行うことを知り、これだ!と膝を打って参加した。

 

パタゴニアで聞いたサフィアさんの話は衝撃が大きかった。というか、日々の暮らしのなかから社会にどうにかアプローチしたいというサフィアさんの苦闘に胸が苦しかった。末吉里花さんを知ったのもそのイベントで、素敵な詩を読んでくださった。

 

フェアトレードというものは、私が生きることが社会とつながっていることなんだと認識すること。私と、社会に生きるその他のみんなを対等に置くこと。そんな考えなんじゃないかな、と思った。学生のみんなは、そんな社会の兆しを感じて、フェアトレードサークルに入るのかな、と思った。

 

で、あれば、ドリプロに協力するために必要なのはテレアポの仕方ではない。フェアトレードの考え方を、社会の見方を、もっと当たり前なことにすることだろう。

 

2013年になった。

 

HASUNAの白木夏子さんがエシカルジュエリーという言葉とともに、いくつかの記事に取り上げられた。そして、ナナロク社さんから本を出すということを知った。これだ、と思った。

 

幸いにして、紀伊国屋書店新宿南店さんと親しくさせてただいていた。大学同級生であるユーグレナ出雲氏の出版記念講演を、学生団体主催で開催させていただいたご縁。講演を取り仕切ってくれたのはソーシャルの本棚というコーナーの担当者だったが、その方も大学の後輩でクラスもお隣だった。入ってよかった東大。中退したけど。

 

紀伊国屋書店新宿南店と連絡をとり、白木さんの本の出版記念として、ドリプロ主催でドリプロのみんなと白木さんの対談イベントをさせていただくことになった。これで、エシカルとかフェアトレードの認知度向上にも少しはつながるし、そんな活動に興味がある人にドリプロを知ってもらえる。ドリプロとしても、学生たちに向けた活動を行っているのではなく、広く社会に向けて自分たちの存在をアピールしていくきっかけになる。

 

イベントは4月開催となり、僕は白木さんともお会いし、HASUNAの本店(外苑前にあった素敵な旧本店)でHASUNAのみなさんと打ち合わせをしたり、『世界と、いっしょに輝く ―エシカルジュエリーブランドHASUNAの仕事』 という美しい本をつくったナナロク社さんを訪れたりして、準備を進めた。

 

が、困ったことがあった。ドリプロの学生と白木さんの顔合わせができない。まあ、対談なんて当日の調整で全然OKなのだが、それにしても礼儀上挨拶はしておく必要があると思った。

 

もう一つ。エシカルという言葉について。感覚的にはよくわかったが、でも掴みづらい。フェアトレードとの違いとかも。エシカルについても、もうちょっといろいろな人の話を聞いておく必要を感じた。

 

そんな困りごとを一挙に解決できる機会が訪れる。2013年3月24日、 ETHICAL FASHION JAPANさんの1周年イベントである、「エシカルショッピングナイト」。

 

今考えるとスゴいイベントで、エシカルファッションの関係者が一堂に揃っていた。ほんと、みんないた。そこにドリプロの学生と行って、ブースをだしていたHASUNAの白木さんに挨拶をして打ち合わせしちゃえばいい。ついでに、いろいろなエシカルブランドから話を聞けばいいと思った。

 

僕には、どうしても聞きたいことがあった。キャリアとか人事・HRの仕事が本業なのだが、フェアトレードを知るうちに、「労働市場フェアトレード」というのはあり得るのか、それはどんなものかを考えていて、エシカルフェアトレードの関係者に意見を聞きたかった。

 

そんな計画で、「エシカルショッピングナイト」に参加した。無事に白木さんとの話も済んで、いろいろなブランドの話も聞いて、存分に楽しんでいた。何人かに「労働市場フェアトレードって、あり得ますかね?」と聞いたが、あまりコレという回答はなかったものの、実に実にエキサイティングなイベントだった。(オルタナS池田さんの記事参照)

alternas.jp

 

気づけば、妙なブースが一つあった。HASUNAの隣。変な形の竹製品を置いている。他のブランドは何人かスタッフがいて、ちょっとキラキラした感じなのに、そのブースは一人しかいなくて、茶色い竹が置いてある。

 

よく分からん。

 

魔が差してブースに行き、一人店番をしていた方にブランドの話を聞き、さらに分からなくなったものの代表は大学の後輩らしく(入ってよかった東大。中退したけど。)、ためしに店番の方に「労働市場フェアトレードって、あり得ますかね?」と聞いた。答えは、「これから来る代表の山下さんなら答えられると思います」というものだった。そして衝撃の一言、「もう少しすれば、山下さんと首狩り族の人がきて鼻笛を吹くので待っていてください」。

 

EDAYAプロボノ1号肥留川さんがこんなことを言ったせいで僕は山下彩香という人に会い、「労働市場フェアトレードって、あり得ますかね?」という問いに答えをもらった。

 

FairTrade Drippack Projectのみんなと知り合わなかったら、僕はエシカルに興味をもつこともなく、EDAYAを知ることもなかった。その点で、恩義は計り知れないと思っている。

 

だから学生団体として代替わりしようとも、折々で一緒にイベントをさせてもらっているし、とても大事に思っている。エシカルペイフォワードをはじめたときも、ドリプロのコーヒーを扱いたいなと思い、実際に店舗とECに置けることになった。

 

そして10月30日には、またイベントを行ってもらえる。毎年毎年、こうやって一緒に何かができるというのは本当に幸せだよ。

 10/30(日)Link Project Vol.62 フェアトレードを乗り超えるサステナブルな環境、食、農を求めて

 

僕がドリプロによって新しい世界に導かれたように、イベントに参加した人に何かのきっかけがあるといいな。

 

その後の話。HASUNA白木さんとドリプロの対談イベントは、かなりの聴衆がきて大成功だった。僕はイベント全体を見ながら一つの決断をする。当時は会社を経営していた。友人と起業して、偉そうに専務をやっていたけど、この会社をたたむことにした。

 

そして人事として企業に入りつつ、学生たちと社会事業をしようと決心した。パラレルキャリアだよ、これからはと思った。

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加えて、ドリプロに受けた恩というのはこれだけではない。例えば、櫻井秋那さんというメンバーがおり、彼女のおかげで僕はR ethicalさんを知り、そしてMaiteの吉田彩子さんとお会いした。櫻井さんに言われて、国立までMaiteの展示を見に行って、吉田さんに会った。販売スタッフとして、エシカルブランドに関わることも教えてくれた。櫻井さんは、「エシカルを教えてくれた女性」とも言える。

 

ドリプロによってフェアトレードエシカルを知り、EDAYAと出会って、パラレルキャリアがスタートするわけだけど、そこから今日までの道程は、また別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Our Leader

ci.mycampus.jp

僕ほど、山下彩香という人を揶揄する者もいないと思う。

 

日本発、アジアから事業を興した女性として各処で敬意を払われたとしても、ビジョナリーらしい穴ぼこだらけの人物で、近侍する僕としては雑言の止む間もない。

 

山下さんは何故かキャリアについての取材が多いが、人事・HRを仕事とする僕に言わせれば、大学院をでて勢いで起業して蛇行を続けている人に、聞いて参考となるキャリアがあるとは思えない。キャリアについて話す方も、聞く方もどうかしている。詐欺じみてる。学生諸氏には、真に受けて人生の指針としたら身を誤るので気を付けろと言いたい。

 

そんな雑言を吐き続けながら、もう4年間、山下さんを代表として戴いたEDAYAの一員をしている。

 

僕は独立不羈かつ表裏比興を旨とするので、誰かの下に長く留まることが出来難い。が、4年。リーダーと目した人、仕えた人の中では最長かもしれない。

 

山下さんの凄味はここにあると思う。

 

カネもない。場所もない。仕事も右往左往。ゴールは彼方。苦労と困惑は山積。そんなプロジェクトに、多くのメンバーを巻き込み、それぞれのビジョンとキャリアを育てることを、国境も言葉も超えて、山下さんは成している。だからこそ僕も4年、サーバント役を務め続け、学び続け、なおも飽きることはない。

 

キャリアは一人で作るものではない。関わる人たちと一緒に、その轍を刻むものであろう。山下彩香という人に会うことがあれば、メンバーのビジョンとキャリアを育てる契機をまき散らしながら、自身のビジョンをキャリアも育てるリーダーシップの一端を見てほしいと思う。それに触れてもらうことが、若い人への一番の教育だと思う。

 

2016年は、日本側のEDAYAとしては停滞の年だった。僕も大したパフォーマンスを行えなかった。でも停滞は停滞でよいと思う。走るなかで縺れたものを鎮静化し、次の手を打つことができればいい。

 

気が早いが2017年のEDAYAは、より多くの仲間のビジョンとキャリアが育つ場としたいと、徒然に。

 

あぁボブ・ディラン、、。アメリカ文学はまたもノーベル賞を逃したのか?

ボブ・ディランノーベル文学賞をとったけど、それに驚きの声があがっていることに、僕は驚いている。

 

ノーベル文学賞の有力候補として以前から挙がり続け、今年は、今年はと噂をされていたボブ・ディランが受賞したところで、リストの上のほうの名前が順当に選ばれた感じで、むしろ普通すぎて面白味がない。

 

・・と斜にかまえてしまうのは、僕は大学でノーベル文学賞の研究をしかけていたし、文学を離れた後も毎年10月第3週が近づくと予想をたて、受賞作家が発表されれば書店に走る生活を送っているから。

 

詩人ボブ・ディランノーベル文学賞の有力候補だったということを、多くの人が知らなかったことは当然で、健全で、ミュージシャンボブ・ディランのライトファンを中心に驚きと歓喜があがるのも当然で、健全。 

ボブ・ディラン自伝

ボブ・ディラン自伝

 

 僕が驚いた、というか嘆息したのは、アメリカ文学の位置づけについて。

 

アメリカ文学は、もう何年もノーベル文学賞を受けていない。今回、賞がアメリカ(というか、USA)に来たものの、ザ・アメリカ文学という作家ではなくボブ・ディランという変化球に渡ってしまったことで、ますますノーベル賞が遠いという印象を受けた。

 

あぁボブ・ディランかよ、、。アメリカ文学はまたもノーベル賞を逃したのか?みたいな。

 

ノーベル文学賞はある程度、地域巡回をしている。ヨーロッパ中央(仏・独・英・伊・西・北欧など)、ヨーロッパ周辺、南米、北米、アフリカ、アジアみたいな地域分けで、それぞれ3:2:1.5:1:1:1みたいな受賞比率。2010年代だと、リョサ(南米)→トランストロンメル(ヨーロッパ中央)→莫言(アジア)→マンロー(北米)→モディアノ(ヨーロッパ中央)→アレクシェービッチ(ヨーロッパ周辺)と来ていた。

 

そろそろアフリカかな、あとは中東とか諸島部とかの変わり種が来るかなとか考えていた。シリアの詩人アドニスとかどうよとか。

 

同時に、長くアメリカ文学が受賞していないので、アメリカの大物作家に渡るものいいなぁと思っていた。有力候補の常連、ドン・デリーロリチャード・パワーズ、ジョイス・キャロル・オーツ、フィリップ・ロス・・。

 

93年のトニ・モリスン以来の無冠を何とかしてほしい。胃もたれするような大著を繰り出すザ・アメリカ文学ガラパゴス化させようとしないでほしい、という文学ファンの願い。

 

で、、、結局ボブ・ディラン。嘆息。

 

アメリカの作家協会か何かと、ノーベル委員会(スウェーデンアカデミー)が仲が悪いとか、アメリカ側がちゃんと自国の作家を推薦しないとか、事情はあるみたいだけど、、文学の未来のためにはアメリカ文学作家を評価しましょうよ、、と思う。

 

今年、『ターミナルから荒地へ』という優れたアメリカ文学評論集が出た。副題が『「アメリカ」なき時代のアメリカ文学』。世界のスーパーパワーとしてのアメリカという虚象が崩れている中で、アメリカ性をテーマとした大著(白鯨みたいな)をなすことがステータス化してきたアメリカ文学はどこへ向かうか、という実に面白い本だった。

tetsuji178.hatenablog.com

 

アメリカ文学が今まさに変容の時期なのだとしたら、ノーベル賞アメリカ文学に渡るのはもう少し先になるのか、どうか。。

 

最後に。1998年、大学1年生のときに周囲に「村上春樹ノーベル賞をとるよ!」と力説してたらすっっっごいバカにされた。マジでバカにされた。悔しかったので忘れないのだ。。

 

 

 

 

メコンブルーとシュポール/シュルファス

昔つきあった女の子は、テキスタイルを学ぶ美大生だった。

 

つきあいはじめの頃、東京都現代美術館でひらかれた『シュポール/シュルファス展』(正式名『ポンピドゥー・コレクションによるシュポール/シュルファスの時代 : ニース〜パリ 絵画の革命 1966〜1979』)を見に行った。60~70年代芸術運動の回顧展。

 

その中に、大きなテキスタイル数枚を天井から吊るした作品があった。布地に、間隔をあけながら多色の横縞が走っている。作品名は「Penelope(ペーネロペー)」とあった。

 

僕はこの作品に圧倒された。

 

現代文学を学ぶ文学徒だった僕は、作品がなぜ「ペーネロペー」なのかすぐにわかった。ペーネロペーは『オデュッセイア』 に出てくる、オデュッセウスの妻。オデュッセウスが彷徨の旅を続ける間、幾日夜の時を過ごし、数多の男たちの求婚を退け、織物を織っては解いて夫を待ち続けたペーネロペーの時間そのものが、作品になっていた。

 

天井から吊るされたテキスタイルは、時のしじまに見るものを押し流していきそうで、無言で立ちすくむしかなかった。

 

オデュッセイア』を読んだことのない彼女は、作り手の視点で「これ何の糸かな?どうやって染めたのかな?」と話していた。僕はペーネロペーの時間に流されてしまわないように彼女の手を握り、「・・テキスタイルって凄いね。」と言った。

 

 

テキスタイルは凄い。布一枚が物語をもつ。そんなテキスタイルを造形として、身にまとうのがファッションである。ゆえにファッションは面白い。

 

メコンブルーの話。

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メコンブルーのシルクストールほど、雄弁なテキスタイルの凄さを楽しめる商品はない。(いや実際には他にもあるけど、メコンブルーはトップブランドに比肩している。)

 

その雄弁さは、読み書きができないカンボジア農村部の女性たちが、チャンタさんという方を中心に最高級の美しいシルクストールを織るという背景によるものではない。もちろん、いわゆるエシカルファッション的な背景のストーリーも素晴らしいけど、雄弁なのはテキスタイルそのもの。

 

ブランド名の通り、メコン川の折々を想起させる青、蒼、碧、藍、紫、灰、墨・・。川の周りの木々や陽光、土や空気を感じる色たち。メコンブルーのシルクストールにも、時のしじまが織り込まれ、加えて自然の移ろいが染められている。

 

圧巻なのは、Jazzと名付けられた茜色の一枚で、メコン川の水面に映りたゆたう夕陽の色を織り込んでいて、見るたびにため息をついてしまう。

http://mekongblue.shop-pro.jp/?pid=79408839

 

そんなメコンブルーさんと僕の関わるEDAYAは、1年くらい同じ建物にオフィスを置いていたのだ。(というかメコンブルーさんが入居していた建物にEDAYAも入って、先に出た。)代表の高橋邦之さんも、その他のプロボノの皆さんも、楽しい&心強い仲間たちだと思っている。

 

なんだか高橋さんがバタバタされて、「この冬はメコンブルーのシルクストールを買って、おしゃれに過ごそう」キャンペーンみたいな感じになっているので、すかさず懐かしのオフィスに駆けつけて、僕も1枚買ってきた。

 

水面みたい、と感じる翳をもつ青でありながら、角度を変えると紅が透けるKhmer Flower Ruby。首に巻いて、多彩な色移りを見ながら、これはどんな時の水面なんだろうと思いはせるのが楽しい。テキスタイルって凄いなぁ、、と改めて思う。

http://mekongblue.shop-pro.jp/?pid=90869902

 

と、いうわけで大好きなメコンブルーさん、高橋さんの応援のための宣伝なのですが、販売サイトを見てこれほしいと思った方、商品を見てみたい(見ると凄さはわかる)と思った方など、ECでの決済ではなく直接高橋さんにご連絡ください(で、いいんでしょうか?)。 

 

 この冬は、身近な人がみんなメコンブルーのストールしているようになる気が・・する。

mekongblue.shop-pro.jp