水が流れるように仕事をする
本業より。「男性の育児休職取得」について、ローソン人事企画部長 山口さんのインタビュー。
仕事で一度だけ泣いたことがあって、それはローソンを訪問した後の大崎駅でだった。
2008年、コンビニのフランチャイジーに社員を紹介する事業を立ち上げて、NPOと協働した就労支援を行っていた。秋になり応募してくれる人が増えた。生活に困難を抱え、苦労している人たちだった。
事業が軌道に乗った気がして嬉しくて、懸命に推薦状を書いてローソンやファミリーマートに送った。
全員、不採用。「急に応募者が増えたので、今は採用しない」という理由だった。
何とかして人の力になりたかったのに、無力さが不甲斐なくて、ローソン訪問の帰り、JR大崎駅のコンコースで泣いてしまった。
大先輩のコンサルタントが慰めてくれた。「私も、つらいことはいっぱいありました。」とその人は言った。人事として、リストラを断行した経験のある人だった。
「水が流れるように仕事をしなさい。」
と言われた。いいですか稲葉さん、水が流れるようにです、と。
人の力になりたい、助けになりたいと思い入れ、のめり込み、クールさを失い、かえって混乱を生じさせていると、見抜かれていた。執着を捨て、淡々と仕事をすべきだった。
「水が流れるように」というのは、ソーシャルセクターに深くかかわるようになって、より意識するようになった。支援したいと力むことで空回り、傷つける人が増えることがある。
現場に、心が揺さぶられるような現場にいればこそ、静謐に、水が流れるように仕事をしなければならない。絶対零度の心を持たなければ、誰の力にもなれない。
熱い必要なんてない、淡々と、水が流れるように。
ローソンの帰り、大崎駅で泣いた数週間後、リーマンショックが起こった。