「出現する未来」から導く、性暴力被害者や自殺念慮者へのアウトリーチ。と、ニート・ひきこもりへのアウトリーチ。

リスティング広告を利用して自殺リスクの高い方にアプローチする「夜回り2.0」を行うNPO法人OVAの伊藤さんが、その仕組みを性暴力被害者の方への支援のアプローチにも広げる、と聞いたとき、嬉しかった。

性暴力被害者の方に寄り添うためにも、意味の、価値の、効果のある仕組みだと思っていたから。

 

さらに、その取り組みを主体として行うのが、NPO法人しあわせなみだの中野さんと聞いて、さらに嬉しかった。しあわせなみだの活動は2012年頃から存じており、クラウドファンディングを通じて暴力のない世界をうったえるファッションショーを行うなど、継続的な活動を行っていらしたのを耳にしていたから。

 

NPO法人Social Change Agencyの横山さんがお二人を繋がれたそうだけど、こういうソーシャルセクターで着実な仕事を行う団体のコラボはとても大事なことだと思う。

 

そこで生まれたしくみ「サイレント・ティアー」(http://silent-tears.shiawasenamida.org/)の活動報告があったので、聞いてきました。題して、「声なき声を聴く~暴力に遭ってしまう人生を考える~」。

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性暴力被害の苦しみを検索すると、「サイレント・ティアー」の広告が表示される仕組みで、5ヶ月程の運用ですがしっかりと実績は上がっているそう。実績が上がる、というと冷たい感じですが、数人づつでも救われている人がいる、ということで、本当に素晴らしいことだと思います。

 

東京というエリアに限られているのと(神奈川でも県により実施されているそうだけど)、相談時間がコアタイムである夜中をカバーしていない、という分かりやすい問題もあるけど、それは想定内だと思うので、きっと徐々に対処されていくのでしょう。

 

中野さん、横山さん、伊藤さんからそれぞれのプレゼンがあったけど、個人的には横山さんのアウトリーチについての話が面白かった。

確かに、いままで相談施設などへの来所を待つのみでリーチできていなかった要支援者(って表現は適切と思わないけど・・)に、ITやコミュニティの仕組みを通じてアプローチしていくアウトリーチは大切だし、どんどん密になっていくといいな、と思います。

 

同時に、アウトリーチされた方の気持ちを考えてしまった。

僕が関わっていた領域というと、ニート・ひきこもりの若者なのですが、自宅でひきこもっている若者にアプローチして、若者サポートステーションなどに来てね、というのはとても大切。

でも当のひきこもりからすれば大きなお世話だったりする。僕の考えですけど、まだ社会に出ていきたくないな、と思う人を無理やり引っ張り出すのは、あんまりいいことと思えない。一億総活躍だからって、ニートを囃し立てて働かせるのは考え物でしょう。強制労働じゃないんだから。

 

アウトリーチは大切だけど、リーチした後はリーチする側の論理で考えるのではなく、リーチされた側の気持ちで考えて寄り添っていくのが肝要だろうなと思う。

そうでないと、支援者の傲慢みたいな罠に陥ってしまう。

 

これは、リーチする対象がニート・ひきこもりと、自殺念慮者と、病気や貧困の方とによってもかなり異なる、とは思うけど。病気の方とかは、首に縄つけても病院に連れて行かないといけないこともあるかもしれないし。。

 

そしてプレゼンの最後に伊藤さんが話した、これからAIやロボティクスがさらに発達した社会での性暴力被害対策、という視点は、流石だと思った。

というか、ソーシャルセクターにいる人はみんなこういう視点を持つべきだよ。

 

今目の前の社会の仕組みで、苦しんで痛めつけられている人たちがいる。その人たちを救うために、今目の前の社会の課題解決に取り組んでも、今目の前ってすぐに過去になってしまうので、常に後手後手に回ることになる。

 

性暴力でいうと、ネットの出会い系がトラブル発生源になりやすいと追いかけてもそれはもう古くて、LINEの出会いアプリとかに現場は移っている。じゃあLINEを使いこなそうって頑張っても、慣れたころには現場はさらに先に行ってしまっているでしょう。いつも後手後手。

 

そうじゃなくて、これからの社会変化を見越した上で、そこにどんなリスクがあるかを予想して網をかけ、社会がその未来に追いついたらその網でごっそりと苦しんで痛めつけられている人たちをサポートできるように、、そもそもリスクへのワクチンを作っておくように、そんな風にソーシャルセクターも頭を使わないといけない。たぶん。

 

「出現する未来」から導く、というのは「U理論」のオットー・シャーマー博士の新刊の題名だけど、ソーシャルセクターの支援事業が「出現する未来」を想定してセーフティネットを作り、未来を待つくらいのしたたかさを身に着ければ、人を苦しめるナニモノかとのいたちごっこも、有利に進められるかもしれない。

 

と、いうわけで社会事業に関わる者はすべからくAIとか遺伝子工学も学ぶべし、、という、結構ハードなことを考えたのでした。

 

もちろん、今目の前で苦しんで痛めつけられている人たちと寄り添うことが一番大事だと思うけど。。

 

余談。

しあわせなみださんは、イベントの翌日に参加者にもアンケートのまとめを送って下さいました。これは単純だけど、なかなか出来ないことだと思います。嬉しかったし、団体としてしっかりされてるな、と思い感服しました。

真似したいです。