耽典籍:「接点を増やしながら接触を失っていく」時代の接点型・接触型ビジネスのスケールについてと、非身体化。『人を動かす2』D・カーネギー協会(創元社)

「過去のこの日」によれば、3年前の11月11日は当時新刊の『人を動かす2』を読んでいた、、らしい。

 

デジタル時代の人間関係の原則」という副題の通り、20世紀初頭の著作である『人を動かす』を現代に改編した二番煎じの本だけど、D.カーネギー協会がそれなりに試行錯誤して出した本みたいなので、まあまともな内容、と思う。

 

3年前は序文にいたく共感した。

曰く、

カーネギーの時代には、今日のメディアも説得法もなかった。他人とつながる方法は、顔を合わせるか手紙か電話かしかなかった。顔を合わせるのが定例だったが、それは今では異例だ。」「今日多くの人が、接点を増やしながら接触を失っていく皮肉な技術を身につけている。」

 

「接点を増やしながら接触を失っていく皮肉な技術」という表現はイイ!と思い、その後ときどき使わせてもらっている。

 

2012年の11月は、起業した会社の専任になって、かなりの数の人に会って漫遊力説の日々だった。Web系でマスを狙うようなビジネスモデルを横目に見ながら、学生団体といっしょに、人と人がフェアに、フラットに会い、話す機会と場づくりに奔走していた。だから、この「接点を増やしながら接触を失っていく」という表現が響いたのだと思う。

 

 

3年経った。2つのことを思う。

 

1つ目は、ビジネスについて。ビジネスを、接点を増やすビジネスと、接触を増やすビジネスとに分けることはできないか。

 

接点を増やすビジネスは、仕組化ともいえ、マス化しやすい。スケールしやすい。

一方で接触を増やすビジネスは、個別対応が多く、時間も効率も悪いこともあり、スケールしにくい。

・・・んじゃないかな。

 

どちらも大事なビジネスモデルだと思う。接点を増やすビジネスのほうが、波及する人数も地域も金額も大きいが、接触を増やすビジネスが劣っているわけではないと思う。

 

以前、SOIF(僕もメンバーになっている寄付イベント)で、e-Educationさんとユイマールさんの話を聞いた。どちらも教育にかかわる活動をされているが、接点型のe-Educationさんがマスで世界規模なのに対して、接触型のユイマールさんはすごく尽力されてモンゴルの孤児院の数名と深く信頼と愛情を築いていく。

 

どちらも素晴らしい活動で、尊い。でも僕は個人的に、ユイマールさんが好き。たった数名、されど数名。

 

ビジネスは(社会事業は)スケールを目指すべきか、という点は最近EDAYAでもずいぶん話題になったけど、僕はスケールする必要はないとずっと思っている。

 

ただその思いは、ガキの独りよがりなんじゃないかと不安だったので、Unreasonable LabでOisixの高島社長にメンタリングをしていただいて折に聞いてみた。

ら、即断で「別にスケールなんてしなくていい」と返してくれたので、安心した。まぁ、きちんとビジネスモデル(とうか顧客設定)を組み立てないといけないので、スケール云々を言えるフェーズではない、だけかもしれないけど。。

 

2つ目。22世紀を考えて。接点と接触を分けて考えるのは、身体性や物理的距離に支配された旧時代的感覚ではないか。

 

電子化、データ化が進む世の中であれば、人間の身体にこだわる時代は終わるだろう。3Dホログラムの触れ合いが人と人との親しみの原点になるかもしれないし、テレポーテーションに用いるような転送用データを混ぜることが官能的な交歓になるのかもしれない。

 

どうせ時代は進むのだから、はてその時にどう『人を動かす』のか。そもそも、その時の「人」とは誰か?

 

人を動かす2:デジタル時代の人間関係の原則D・カーネギー協会(創元社)。

人を動かす2:デジタル時代の人間関係の原則

人を動かす2:デジタル時代の人間関係の原則