耽典籍:極薄ガンダリウムの上で踊る太って老いたハムレットについて。『人類は絶滅を逃れられるのか』(ダイヤモンド社)

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房総の先っぽまできて、『人類は絶滅を逃れられるのか』を読む。科学や人文学の碩学4人が「人類の未来は明るいか」について賛否に分かれて繰り広げたディベートの収録。

 

水掛け論的な展開があるので一人ひとりの論考には深い理解を選られないが、全体像を捉えるにはいい。ユーモアを忘れず遠慮なく相手を殴る大人な議論も楽しい。

 

思ったのが、我々は太ったハムレットとなっていき、足元の氷はより薄くしかし固くなっていく、ということ。

 

飢餓や貧困や病気の総量は、人類をあわせれば減り続けているし、大きな戦争も抑えられている。環境破壊も野放しではない。人類は不可逆的に豊かになっているということもできる。

 

一方で、世界があまりにも緊密になり過ぎたために、蟻の一穴が全的崩壊をもたらしかねなくなったというのも肯んずるところ。数千億の戦闘機より、数千円のドローンが怖い、みたいに。杞憂派は空を見上げるだけでは済まなくなった。

 

しかしそれで足元が脆くなったわけでもなく、やはり世界が密になることでのセキュリティやレジリエンスの強化を考えれば、薄氷のガンダリウム合金化も進んでいるのかもしれない。

 

そしていずれにせよ我々は苦悩をたしなむのであり、寿命100年お悩み3倍のハムレットにLife Shiftしていくだけともいえよう。

 

極薄ガンダリウムの上で踊る太って老いハムレット

 

歴史に精通するライフネットの出口さんが、人類史上悲観論が勝利を収めたことはない、ただし気候変動は危ういとおっしゃっていた。AIで社会課題に取り組む方は、活版印刷が人類を滅ぼすといわれた笑い話を引いていた。

 

判断は人の悪癖。楽観悲観なくニュートラルに、現在の視点ではなく未来から現在を振り返って、為すべきことをなすのが肝要かと改めて思う。

 

それがソーシャルアクション成功の秘訣かなとも。

 

『人類は絶滅を逃げられるのか』スティーブン・ピンカー、マルコム・グラッドウェル、マット・リドレー 他 (ダイヤモンド社)