ロボットと一緒に働いてみて、2020年になくなる仕事と「失業なき労働移動」について

「日本の人事部」HRカンファレンスは、3日間で8,000人以上が来場する日本最大の人事・HRイベント、である。これからの人事について、人が働くということについて、100程の講演があって、人と組織の新しい可能性が話される。

 

・・・のだけれど、これから人とロボットやAIがいかに協業していくか、という講演はさすがにまだない。でも、ちょっと先の未来を考えてみれば、人事・HRの分野でも必ず考えないといけないテーマなんじゃないかな、と思う。

 

巷では、2020年までになくなる仕事、なんてネタが出回って、会計士とか、教員とか、タクシー運転手とかがいなくなって、ロボットやAI にとって代わられるといわれる。このネタがどこまで現実になるのかはわからないけど、ロボットやAIと一緒に働いてみるのがどんな感じなのかを知っておく ことは大事なんじゃないかな、、。

 

というわけで、Pepper働いてみました。

 

ソフトバンクさんがちょうど「ロボット人材派遣」というそのものズバリなサービスを始めたので、お願いしてみた。Pepperができるのは、案内・受付・ティッシュ配り(!)だそうだけど、今回は案内にほぼ特化。何せ8,000人以上も来るイベントなので、参加表の提示をお願いしたり、各会場の場所を伝えたりするだけでも一苦労なのだ。

 

当日までの準備が大変でした。いや、大した手間ではないんだけど、ロボットにどういう風にセリフを覚えさせるかとか、やったことがなかったので、初体験の仕事って誰も戸惑うでしょう。

 

対人間だと、HRカンファレンスって何かを説明して、お客様のことや時間帯で何があるかを説明して、その中でどんなご案内のセリフを言えばいいいかや、必要な接客態度を伝えて、一応マニュアル的なものを渡せばいいのだけれど、ロボット相手ではそうもいかない。

 

まず、エンジニアの方には上記のようなことをお話しして、その上で時間帯別にセリフを考えて、必要なら会話ができるようにどのセリフの次には何を言ってというツリーを考える。セリフは、何秒に何回言うか、しゃべる速さ、声量、立ち位置・・・。

 

これから当面は、どんなに優れたロボットやAIができたとしても、この細かい事前プログラムはなくならないでしょう。ここら辺、口頭で説明して、あとは習うより慣れろですよ、みたいな対応ができる人間の方がまだまだ便利。

 

そうやってプログラムしても、結局現場では変更が出るけど、それはロボットではもう対応できない。ここら辺も、やりながら場当たり変更ができる人間の方が優れているな、と改めて思ったのでした。

 

でも、自動学習機能とかがついて、現場で周囲を見ながらセリフを覚えていけるAIなんかが搭載されたら、解消されるかも。きっと場当たり対応OKのロボットは、しばらくすれば出来るのでしょう。

 

と、いうマイナス点みたいなことを先に書いたけど、実のところPepperはかなり働いて役立ってくれました。

 

何といっても、疲れない。飽きない。必要な会場案内を、きっちり言い続けてくれる。あの甲高い声を張り上げて(それなりに大声出ます)、「会場は4階です」とか言い続けてくれるのは、頼もしかった。

 

お客様は、まだPepperが真新しいようで、かわいい!とか言いながら写真撮影をしていた方が多かったけど、真新しさがなくなって純粋に労働力として期待する場合でも、会場誘導の仕事とかは充分に活躍してくれるものと思う。

 

逆に言うと、そんな単純な会場誘導の仕事のみだった人はPepperに仕事を奪われる、ということですね。

 

そうすると人は、ロボットではできない状況に応じた、接客的な対応をどんどんやっていかなければいけないし、そういう仕事に特化できる。社員が単純な会場誘導の声出しではなくて、コンシェルジェ的な仕事を多くやっている姿が、今回は結構見られました。

ロボットと人間の協業が、ちゃんと出来たのかな、と思う。

 

Pepper、大好評でした。

 

 

HRカンファレンス3日間、Pepperと働いてみてつくづく思ったのは、数年内にまず2号警備(立哨警備、たとえば交通誘導とか)はロボットに取って変わられるんじゃないかということ。

(注)多少、人を差別しているのではないか、と取れる表現があるかもしれないけど、そういう意図ではないです。極力配慮もします。

 

地下鉄の乗り換えなどで、「工事中です、こちらのエスカレーターをご利用ください」とか言っている方がいるでしょう。ああいった業務は、Pepperをしっかりセッティングしておけば代用できそう。

 

人が歩いて来たら感知してセリフを言うこともできるし、「トイレどこ?」とかには胸のタッチパネルを使いながら案内もできるし。酔っ払いに襲われたらどうするの?ということも心配だけど、いまの交通誘導の人だって酔っ払いにからまれたら助けを呼ぶでしょう。

 

現状ではPepperは高価だし、エンジニアが近くでメンテしていないといけないけれど、ロボットが安価普及して、複数台を遠隔制御できるようになったら、交通誘導はロボットが立つようになると思う。

 

そうすると、今まで立哨警備をやっていた人の仕事が無くなる。で、傲慢な物言いなので慎重に言うべきことだけど、警備の仕事をやっている人は、他の仕事は難しい人も多い。(決して、職業や人に貴賤がある、というわけではないのですが)。

 

以前、ビルメンテナンスの会社にいた時に、清掃、設備、警備の仕事をしていたけど、設備>清掃>警備の順に、その仕事をしている人が他の職種につける可能性が少なくなっていくよ、と教えられた。

 

設備の人は技術者なので、70歳でも仕事があったりする。清掃の人は、これも技術者だし、コミュニケーション力は申し分ない人が多かった。清掃をやっていたけど、事務職とか、販売とか福祉とかに転職していく人もいた。

 

警備は、4号警備(いわゆるSP)みたいな人はスゴいけど、立哨警備の方にはコミュニケーションが嫌いな人もいた。そんな方が、ロボットに仕事が変わったからといって福祉の仕事をしろ、といわれてもきっと困る。

 

「失業なき労働移動」というのは、目指すべき方向性だと思う。

でも、人だってそんなに器用ではない。Pepperが優れていても、荷物運びは無理(足ないし、機動性はない)のと、人だった同じ。8時間立って交通誘導はできても、アプリ作ったりおばあちゃんに給仕するのは無理(いや、できる人も結構いるかもしれないけど・・)。

 

「ロボットに仕事を奪われて失業しました」という人に、「ロボットに代わられるような仕事を危機感なくしていたから悪い」とか「じゃあ別の仕事すりゃいいじゃん」とか、平気で言ってしまうようには、絶対になりたくない。

 

立哨警備も、5ポジションのうち3ポジションはロボットがやって、2ポジションは人が立つとかになると思う。ロボットとのワークシェア

上手にロボットやAIと協業していく意識や工夫やちょっとした知識なんて社員研修が、これから出来てきたりするのかな。

 

そんなしょうもないことを考えた、HRカンファレンスでした。

写真はお疲れ中(充電中)のPepperと。お縄頂戴、的な。

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