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耽典籍:男性への殺人だけが、見えない塩になる。『男性権力の神話 《男性差別》の可視化と撤廃のための学問』ワレン・ファレル(作品社)

楔はどこか。

 

女性活躍やダイバーシティやマイノリティのエンパワーメントなどを謳っていて、男性正社員モデル(「箱入りおじさん」層)にメスを入れようとしないのは怠慢だと思うけど、最近はそういった男性へのアプローチもだいぶ増えてきた。

 

働き方という切り口から、会社人アイデンティティしか持たない男性にパラレルキャリアを勧めるというアプローチがあるけど、でもそれは本丸を突く楔なのか。

 

「男らしさ」などというものに規定される男性性やセクシュアリティ自認などを揺さぶることが、ひいては働き方改革にもつながるような気がする。

 

さらには、男性というものの誕生について。

 

AIが人類から所詮は道具として誕生しながら人類を脅かしかねないように、そしてターミネーターが人類を支配したように、男性は女性から所詮は道具として誕生しながら女性を脅かし、支配したのではないか、とやんわりと思っている。

 

ミジンコが、通常はメスしかいないけど生存の危機になるとオスを産み出すことを知って・・。

 

と、いうよしなしごとを2014年にも考えていて、そんな逡巡に最適な一冊を読んだ2年前の感想。今読み返しても、所感に変化はない。

 

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20140519

『男性権力の神話 《男性差別》の可視化と撤廃のための学問』ワレン・ファレル(作品社)。

男性権力の神話――《男性差別》の可視化と撤廃のための学問

男性権力の神話――《男性差別》の可視化と撤廃のための学問

 

 
男性は、もっとキャリアや生き方について疑問を持ち、変化をしていくことができるのではないか、と思っている。


もっとエシカルな生き方ができるのではないか、と。


そんな点でかなり示唆的な、傑作本。
アメリカの事例がメインのためピンとこない引き合いも多く、全体的に反語に貫かれているため読みにくいのだが、とても考えさせられた。

「男性社会」を「男性が男性を殺すためのしくみの社会」ととらえ、その中で行われる殺人(や暴力や搾取や抑圧)を「見えない塩」をいう表現は言いえて妙だと思った。


男性ではなく、女性(若い女性でも老婆でも)が、黒人が、ユダヤ人が、殺されると、それは「見える塩」として何らかの意味合いを持ってしまう。ただしこれはアメリカの本なので、男性とはマジョリティーとされている白人男性のことなのだろうな。マジョリティーの存在こそが耐えられないほど軽い、という逆説。

キャリアをテーマとする仕事を本業とする者として、新しい時代の男性のキャリアについて、やっぱり何か考えていきたいな、、と思う。

「過去の生き方を新しいものに移行するための女性と同等の"男性運動”は存在しなかった。」
「全ての男性に共通してある傷は、彼らの使い捨てという心理的傷だ。兵士として、働く者として、父親としての使い捨て。彼らが他の誰かを助けて生かすために殺して死ぬことで、愛されると信じているという心の傷だ。」

なんて文章は、泣ける。