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耽典籍:迷子の記録の、読書録。『恋読』小橋めぐみ(角川書店)

同い年の女優さんが、本についてこんなに繊細でしなやかな文章、匂いのある文章を書いていたのかと、嬉しくなる。

 

本、とくに物語を読むときは、三つの変化がると思う。

 

まず、本を読む前の変化。人は、しかるべき何かがあってその本に出合うのだと思う。読む前には、その頁をひらくに至る変化があり、人は本を手に取る。たまたま、本屋で見かけただけであっても。

 

次に、本を読み進める変化。良い本は、人にその本なりの世界を見せてくれる。本の世界にいざなわれる変化。

 

そして、本を読み終える変化。本がいざなってくれた地点Aと、本がたどりつかせてくれた地点Bは、大きく異なることが多い。そのジェットコースターを呆然と味わう変化。

 

本書は、その三つの変化を身辺の挿話とともに伝えてくれるので、誠実。心のふるえに寄り添うようで、妙な身体感覚があった。

 

「人は、住み慣れたはずの場所で、よく迷子になる。」

 

本読みは、迷子だと思う。迷子の記録が、読書録。

 

『恋読』小橋めぐみ角川書店)。

恋読  本に恋した2年9ヶ月

恋読 本に恋した2年9ヶ月

 

季語のような小見出しがついている。秋隣、春愁、冴ゆ、淑気といった言葉が、季節とともに心を伝えている。粋だなぁと思う。

 

意外に思ったのが、図書館でたくさん本を借りていること。本好きにも、書店で買いたい人、書店でも買うし図書館でも友人からも借りる人、いろいろいると思う。最近では、Kindleばっかりですという人もいる。僕は書店で買いたい人。

 

「欲しい本だけならネットで買える時代になったけど、町の本屋さんは絶対になくなってほしくない。」

 

やはり紙の本がいい。震災を経て、無傷だった角川文庫用紙があったそうで、著者はその紙でできた本に出合いたいと書くが、共感する。手に取ってみたい。

 

「震災後まもなく出版された角川文庫に、その紙が使われている。その一冊に出合いたい。生き残った紙に。」