耽典籍:下の句はいらない。『幕末維新の漢詩』林田慎之助(筑摩選書)

 EDAYAの山下さんが高杉晋作の小説を読んだそうで、辞世の句に感銘を受けていたが、あの野村望東尼がくっつけた下の句は蛇足の最たるものだと思うのだ。

時代の枠を外し、混沌を生む革命家であった高杉晋作の辞世は、宙ぶらりんに人を投げ出す。下の句はその宙ぶらりんにわかりやすく解説を加えてしまい、妙に自己啓発的。

 

そんな話をするなかで、『幕末維新漢詩』のことが出て、以前書いた感想を送れと山下さんに言われたので、転載。

ちなみに、耽典籍というのはこの本で知った藤田東湖の詩「言志」からとった。

 

余談として、僕が小学生のころ、饅頭屋近藤長次郎高杉晋作を主人公にした時代劇があって、感化され高杉の本を買いに走ったのだが、あのドラマ名はなんだったか・・・。

幕末維新の漢詩: 志士たちの人生を読む (筑摩選書)

幕末維新の漢詩: 志士たちの人生を読む (筑摩選書)

 

 【2014/7/24】

 

漢詩の一つも作れる大人になりたいと、かつては思っていたものの、どうやら果たせそうにない。

『幕末維新漢詩』林田慎之助(筑摩選書)。

いわゆる幕末の志士達の漢詩をまとめた本で、文学として優れているかは別として読んで面白い詩も相応に。
有名どころはみな取り上げられているし、それぞれの生き様もまとめられていて読み物として面白い。(出ていないのは坂本龍馬大久保利通くらいか。)

茨城出身者として気になるのは藤田東湖だが、英国の捕鯨船を襲撃しようとして、今生の別れと親父の幽谷と飲み交わしていたら、飲みすぎて船は行ってしまったというマヌケエピソードは可笑しかった。
東湖は地震で死んでしまうが、維新時の茨城(というか水戸藩)の体たらくを思うと惜しまれる。

驚いたのは、橋本左内は投獄から斬首まで5日間しかなかったそうで、そんなに危険視されていたのかと。

また、病身の高杉晋作27歳がともに逃げたのはおうのという芸妓だが、その年齢なんと16,7歳。
くだらぬ三流ドラマ風にいえば、死期を悟った青年革命家と女子高キャバ嬢禁断の逃避といったところか。
あんまりこういう俗悪なまとめはよろしくないとは思うけど。。