徒然妄念:駒猫は鳴いているか?

大学(駒場)のキャンパスには猫がいて、駒猫と呼ばれていた。

彼もしくは彼女は黒猫で、野良猫のくせに実につやつやとした毛並をしていた。それもそのはずで、奴は女子生徒たちの寵愛を受け、お弁当のおかずを分け与えらえて生活していたのだ。

 

翻って、私ならびに同類の友は、女子生徒からものを与えてもらえるなど夢のまた夢で、金もないので昼飯を楽しむなどという文化的余裕もなかった。

 

主食はビスコだった。

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ビスコも、いっぺんに食べてしまうとあっけないので、あのサンドを二つに分解して、友人と分け合って食べる。必然、クリームの多くついている方とついていない方の不平等がでて、揉めることになる。揉めている間は、目先のビスコのクリーム量に集中して根本的な自らの哀れさを忘れることができ、ちょうどいいのだ。

 

半分に割ったビスコを舐めるように食べながら、駒猫が女の子からおかずをもらうのを見ていた。

 

ああ、自分は猫以下なのだ、と思い知る瞬間だった。

 

早く人間になりたかった。

 

ヒエラルキーの最下層民からの羨望と憎悪の眼差しに射られまくっていた駒猫は、その後どうなったのだろうか?もう寿命は尽きていようが、次世代がいるか、化け猫となっているか。

 

そんな大学生活の逆トラウマか、ビスコが好き。以前、死ぬ前に何を食べたいか?と聞かれてつい「ビスコ」と答えてしまった。

 

・・・と、そんな話を会社で若手女子社員にしたらドン引かれた。

わかるまい、君たちにはわかるまい。