耽典籍:女性活躍、男性不況、貧困の女性化、長時間労働慣行・・。『女性はなぜ活躍できないのか』大沢真知子(東洋経済新報社)

これは良著。

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『男性不況』の裏返しみたいな内容に、『「育休世代」のジレンマ』『ハウスワイフ2.0』『LEAN IN』といった最近の女性のライフスタイルについての興味深い本のエッセンスも加味しながら、なぜ働く女性の「数」は増えても「質」につながらないのかを振り返り、各社事例も挙げながら貧困問題などにも目配りしつつ、女性が活躍できる社会への提言に至らせている。
まとまりよく網羅されていて、読みやすい。

『女性はなぜ活躍できないのか』大沢真知子東洋経済新報社)。

ダイバーシティマネジメントがいかに経営に寄与するかの数値も挙げてあり、使える。ポジティブアクションの方法と問題点なども、事例として勉強になる。

女性が活躍できない(女性管理職が育たない)理由としてロールモデルの不在がよく言われるけど、中野円佳さん『「育休世代」のジレンマ』を引きながら、女性の離職による育成コストロ スをおそれるあまり機会不均等になってかえって優秀な女性人材の離職を誘導する悪循環を断ち切るポジティブアクション的方策が書かれており、その実践でロールモデルすなわち働く 女性の「質」の向上が図られるといいなぁとは思う。

・・・が、、そんなことよりも大事なのは2章に出ている「男性の意識を変える」ということと、そこから雇用慣行を変えることだと、改めて思う。雇用慣行というか、何といっても長時間労働慣行なんだろうけど。
長時間労働慣行が改まり、男性も女性も育児や介護だけでなく社外のコミュニティでの活動が多くなったら、もっと社会はしなやかになる、はず。。。

仮にホワイトカラーエグゼンプションの対象範囲が広まって、多くの人が残業代が出なくなったら、長時間労働は改まるのだろうか。だって長くダラダラ働いても残業代出ないわけだから。
そういう効果が期待できるなら、ホワイトカラーエグゼンプションは大賛成。

しかし、女性の貧困問題(貧困の女性化という語が用いられていて、言い得て妙)ってちょっと深刻な話だなと思った。
セカンドチャンスを増やすことが求められているが、ここら辺は先日出版された安藤至大さん『これだけは知っておきたい働き方の教科書』にも説かれていた。要は、階段を用意してちゃんと上り下りできるようにしようってことか。これは女性にとどまらず、若年無業者にこそ大切だと思う。
僕自身が中退ニートからコンビニの兄ちゃんやって、会社に中途だか新卒だかわからない状態で入社してという階段を踏んできたので、このセカンドチャンスの階段の大事さはとっても頷けるし、しくみ作りは虎視眈眈としていきたい。

今年読んだ本で3、4番目くらいの良著だった。