耽典籍 :その修辞は以て時代を超え 『復興期の精神』花田清輝

『復興期の精神』花田清輝

 

戦後文学を代表する文芸批評家の一人として知られる花田清輝の『復興期の精神』を、20年ぶりにひっぱり出してぽつりぽつりと読んでいる。

 

第二次世界大戦中を通して書きつづられた、ルネサンス期二十二人の素描だが、その華麗なレトリックの表皮には凄烈な時代への批判が隠れており、その奥には必死に人とは何かを究めるあがきがある。

 

凄まじき本とはわかっていたが、久々に再読してそのあまりの先見性に驚く。

 

第一遍「女の論理 ダンテ」からして、落涙するほど新しい。
セクシュアリティというものを、人を縛る「~らしさ」というものを、それに苦しめられる生き方や働き方を、いかに崩すかということに腐心する者にとって、70年前の戦時中に、次の時代に向けて書かれた文章に同じ願いを見るということの感興はこの上ない。

 

復興期であり、転換期であるという認識は同じなのだと思う。

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この本の、スピノザを描いた「ブリダンの驢馬」という章が好きで、かつて何度も何度も読んだ。だから「エシカル」という言葉も好きなのだと思う。そこでは選択について書かれている。

 

『復興期の精神』の読書会を、学生諸氏などを募ってやりたいと思っているくらいなのだが、どうなのだろうか。